京都

京都に行ったことがない、という人は少ないと思う。

 

京都に住んでいる人は別だと思うが、

多くの人にとっては京都という場所はなんらかの

思い出が伴った場所なのではないだろうか。

 

ぼくにとっての京都の思い出は、

小学校の修学旅行(ほとんど覚えていない)、

兄の進学、自分の受験、仕事。

そして彼女との思い出。

 

そんなところだ。

 

既婚であることが発覚したものの

一世一代の話し合いの末、

なんとか話ができるくらいの関係を

維持することに成功した。

 

ぼくはきっとわがままなのだろう、

一目惚れしてしまった以上は

いつまでも話だけの関係ではなく、

以前と同じように関係を深めたいと

心の底では思っていた。

そして、それは実現すると、

変に確信めいたものを感じていた。

 

そしてそれは京都で実現した。

 

その当時ぼくは、仕事で月1回京都に行っていた。

京都とはいっても京都の中心部ではなく、

京都駅から車で1時間程度の距離にある場所での案件だった。

 

正直なところ自分の専門性を活かせるような案件ではなく、

いいお金をいただいておきながら、

どこか「お客様」のような、

よく言えば美味しい、悪く言えば意味のない、

そんな案件だった。

案の定というか、そこから1年ほど経った段階で

計画自体が頓挫してしまい、ぼくの関与もなくなった。

 

みなさん元気にしているだろうか。

 

京都に行く時は、だいたい日帰りだったのだが、

その時はたまたま前日泊で行くことになっていた。

京都駅上のホテルグランヴィア

これもたまたま色々な伝手で最上階の部屋を

とってもらっていた。

 

こういう仕事してるとね、

何かといろんな役得があるのよね。

 

ぼくはチャンスだと感じた。

これはきっと、関係を元に戻すまたとない機会だ。

 

ぼくはダメ元で彼女に連絡した。

 

余談になるが、ぼくは通常の就職活動とは少し異なる形で

今の仕事に就いた。

求人していない状態だったが、ダメ元で連絡したところから

今の会社との縁が始まっている。

それ以来、ぼくはダメ元を非常に大事にしている。

常に失うものなど何もない気持ちだ。

 

今回もそれ以来培ってきたダメ元精神が発揮されたんだろう。

彼女は渋々ながらも了承してくれた。

 

本当に来てくれるのか、とても不安だった。

 

当日の夜、仕事終わりの彼女から、

電車の机に置かれたお酒の写真が送られてきた。

 

それが全ての答えだった。

 

京都駅の改札前で出会った彼女は

やはり本当に綺麗だった。

 

もう結構遅い時間だったと思うが、

ぼくらは京都駅上のホテルで濃密な時間を

過ごすことになる。

翌朝までのほんのひとときだったが、

ぼくらはお互いを堪能した。

 

こうしてぼくらは、また同じ道を歩むことになる。

でもこれはまだまだ長い道のりのほんの入り口だ。